だから私は、彼らを動かすのです。









































働かざる者食うべからず。
とはよく言いますが、この世界は段々と
働かなくても食べられるようになっていってる。

と、騒ぐ彼は赤い携帯電話。
今日も忙しく電話を取り次いでいます。




「てめえらも働けよ!」

「やだね面倒くさい・・てか悲劇は働きすぎ」

「激しく同意〜悲劇だけは見てて面白くないよ・・きゃはー」

「怠けすぎだッ!」

「あら私は忙しいわよーメイクにアクセ、セール品あさったりコーデ考えたりデコったり!」

「あたしも食べるのに忙しい」

「てめーらのは趣味だろうが!」

「忙しくても悲劇は・・」

「やらねーよ!」

「そ、そんな悲劇がボクは好きだよ・・?」

「うるせえ!黙れ!」

「世の中はー?」

「金なんだよ!」

「女の子も?」

「金だっつってんだよ!」





不満ばかりを吐き出してそれでも電話を取り次ぎます。



Hey Hello
Hey Hello



彼女は苦笑を零します。
時たま悟ってしまったように。


ああこれは無意味な事?
不必要で時間の無駄?

そんなものが有り触れた世界が携帯電話の嘆く世界。
働かなくても食べれます。
そんな理不尽な世界様。


ああこれは意味が無い?
不満だらけで体力の無駄?

自嘲気味に彼女は笑いなにもかも投げだそうとします。



「解っているだろう。
そうさお前は解っている。

俺には美貌がない。
愛がない。狂喜がない。
口が上手い訳でもなく、なりたいものにはいつもなれない。
だけれどこの世の頂点に立つ。
そんな材料を持っているんだ。

解っているだろう。
そうさお前は解っている。
何もない俺は手を動かし、誰にでも平等にある時間を有効に費やすしかないんだ。」




Hey Hello
Hey Hello



さあひっきり無しに鳴る電話。



働かなくても食べれます。
だけれどその食事は美味いのか?
そのメイクは可愛いのか?
その愛は深いのか?その狂喜は楽しいのか?
そのお喋りは嬉しいのか?
その睡眠も
なりたいものだって。





「働け」
「働」
「金だ」
「金」





Hey Hello
Hey Hello




何処かの誰かの為ではなく
紛れもなく自分の為に




「動かせ」
「動け!」
「金で」
「動く」



それは虚しくなんかない。
それがこの世の真実。
俺が思うこの世の真相。



「さあ働け!」



何も見えなくなるくらい。



「悲劇・・悲劇・・また声が聞こえなくなったよ・・」

「そうか。俺が繋いでやるから」

「悲劇、悲劇・・酷い声だよ聞きたくないよ・・」

「だったら綺麗な音だけ通すから。」



はじまりは単純。
美は食えないし物はすぐに腐れて壊れる。
だったら残るものを探せばいい。
使えるものを求めればいい。


溺れられるし、貪れる。



「解っているだろ?
誰だって綺麗に生きていたいんだ。
俺は特にそう。


綺麗な金で綺麗に食したいんだ!」


さあ動け!



彼女は動かす。今日もその手を。その身を。



美より食より生よりも
美しく綺麗に生きるために。



だから彼女は、俺達を動かすんだ。